FC2ブログ
  JET日本語学校公式ホームページ(to Official Page) / ブログのトップページ(to Blog Top Page)

Google Translate:  한국어로 표시 /  中國語翻驛 /  Translate to English

『博士の愛した数式』を読んで

柳在鉉(韓国)

 数学に優れている周りの友だちから離れて日本に来た私は留学生になった理由だけで留学生たちの中では結構いい点数をとっていたかもしれません。それらが私に自信を与えて数学が好きになって私の進路に影響を与えたと思います。山口先生から推薦いただいた『博士の愛した数式』(小川洋子著)という本のタイトルだけを見て「数式」だから自信を持って読んでみようと思いました。本に書いてあることが小説であることを残念に思いながら、でも数学のように難しくないことに安心しながら読み続けました。

 前職、数学の教授だった博士は交通事故の後遺症で17年前に長期記憶は静止し、短期記憶は80分間しか持てません。博士の10番目の家政婦、28歳の「私」と10歳の「私の息子」ルートが小説の主人公です。博士は洋服に差し立てたメモ用紙を見て自分の障害を知り、他の人たちに混乱を与えないようにします。子供は無条件に愛すべきだという理想の教育観を持った博士は「私」に息子を一人にしないで職場に連れて来るように言います。博士は子供の頭のてっぺんが平らなことがルートに似ているのでルートと呼びます。ルートと博士は野球の話をしながら心を通わせます。博士は交通事故以後始めて理髪店にも行き、野球場にも行くことになります。ルートの誕生日の日、博士はルートに野球グローブをプレゼントし、ルートと「私」は野球のカードを博士にプレゼントします。その後、博士とルート、「私」は別れます。博士の状態が悪化し、病院に運ばれます。「私」とルートが定期的に博士に会いに行くと、博士はルートと「私」がプレゼントした野球カードをいつも持っています。ルートは数学の先生になり、博士は亡くなります。しかし彼が残した愛は「私」にずっと残っています。

 博士は交通事故で記憶を失いました。兄嫁とは何か秘密があるらしいですが小説はそれを重視しません。彼女が過去の恋人というのは表されますが実際に兄嫁かどうかは依然に不明であります。関心事は博士の過去ではなく終わりがない現在です。博士は17年前の記憶で苦しがっているとは思えません。彼はただ数だけを考えます。博士には今、存在する80分のみの現在だけが意味のあることです。

 怪しい人物の話に見えますがルートと博士の人間的な交流が小説の核心だと思います。「博士の愛した数式」というのはオイラー公式だと思います。しかしルートで置換させると「私の息子を愛した博士」というタイトルになるのではないでしょうか。

 数というのは世界の象徴だと思います。博士は数で世界と通じます。数学に優れている博士は数字だけですばらしく世界を再現していきます。数字は世界の象徴や本質としてのイデアかもしれません。数は世界とは違い、完璧だからです。そして博士にとって数は宗教のようです。博士は数から世の中と通じます。

 受信者の立場で情報を発信すべきだというある理論から見ると博士が数で通じるというのはありえないことかもしれません。受信者の「私」とルートは数を理解することができないのです。理解できない疎通手段がどうやって解決できるでしょうか。博士は意思疎通の手段を数から愛で換えます。そのきっかけはルートです。またルートと「私」も博士と通じるように数字を学びます。しかしこれらは意思疎通の目的が数学ではなく愛であることの反証だと思います。博士を愛しているので数字を考えるということです。

 この小説は急激な変化のない静かな話です。その静かなことがこの小説の楽しみだと思います。静かな人生にも特別な瞬間があるようです。本のように特別な人との交流はその人の人生の重大な転換点になると思います。また80分だけの短い記憶の時間で無限な愛を表した博士に感動点があると思います。

(JET通信58号 2009/06/11)

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

全記事表示リンク

全ての記事を表示する

カテゴリ
カレンダー
06 | 2020/07 | 08
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31 -
プロフィール

JET Academy

Author:JET Academy
JET日本語学校公式ページへ

 東京都知事から学校法人の認可を受けている「正式な学校」です。文部科学大臣指定の準備教育機関校でもあり、大学や大学院進学希望者のための特別コース(進学科)もあります。進学校として高い評価を受けています。
 課外授業やホームステイなど、日本体験プログラムも数多く用意。明治大学を中心とした日本人大学生との交流も盛んです。

最新記事
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
QRコード
QRコード