忘れないで欲しいこと
2012年12月1日、
WIC(早稲田大学国際学生友好会)主催の「第47回留学生による日本語スピーチコンテスト」に
JET日本語学校の顏思瑜さん(台湾)が出場し、優秀賞をとりました。
顏思瑜 『忘れないで欲しいこと』
♪ 夕焼け小焼けで日が暮れて
皆さん、私が今歌った歌を知っていますか。これは小さい時に祖父に教えてもらった歌です。私は小さいときに祖父と一緒に住んでいました。祖父は日本語を話すことかできたので、私にいろいろな童歌を教えてくれました。例えば「桃太郎さん」「夕焼け小焼け」「7つの子」などです。初めて聞いた時は、歌詞の内容がわからなかったのですが、何回も聞いているうちに、リズムに合わせて歌えるようになりました。なので私は日本の歌が好きです。そして、毎年の大晦日は台湾の番組ではなく、祖父と一緒に日本の紅白歌合戦を見ていました。その中で印象に残っていたことがひとつあります。それは毎年派手な服を着る小林幸子さんと美川憲一さんです。このように、私は祖父の影響で、日本の文化に対する興味が日に日に増していきました。大学に入る頃には日本へ行きたいと思うようになりましたが、なかなか機会がありませんでした。しかし、今年になって時間かできたので留学の準備を始めました。何枚もの申請書を書いて、9月の終わりにやっと日本にくることができました。長年の夢が叶いました。
日本での留学生活が始まってから、私はよく日本人との交流会へ行きました。そこではいろんな人たちに私の今までの経験を話したのですが、そのときに驚いたことがありました。それは、最近の日本人はあまり相撲を見ないということです。私は小さい頃よく祖父と一緒に相撲の取組を見ていました。塩をまく、しこを踏む、取組が終わった後の礼、それら全部が私の印象に残っています。そして、取組中に力士たちを応援するときの「のこった!のこった!」の意味はわかりませんでしたが、取組を見る時は「のこった!」と叫んでいました。また兄弟と一緒に力士たちをまねして、キッチンで塩を取って、家の中で撒いて、遊びました。もちろん、その後は母に叱られました。でも本当に楽しかったです。“すもう”という文化は私と台湾人にとってはすごく崇高なものですし、実際に見ても面白いものです。もしこの文化がだんだんと日本からなくなっていってしまうのならば本当に残念なことです。
ほかに私の台湾の友達からこんな話をききました。それは「抹茶」に関する話です。その子は日本人の友達と一緒に神社へ行き、 境内にある和菓子屋さんで「抹茶」を注文しました。その子は友達に抹茶の正しい飲み方を聞きました。でもその友達は「どう飲んでもいいよ!」と言ったそうです。この話をきいて、私は残念だなと思いました。なぜかというと、「抹茶」は日本の代表的な伝統文化の1つであるだけではなく、飲む時に作った人に対する感謝の気持ちを表すことがもっと大切だからです。大前提として、抹茶をいただくときには両手で持つことを忘れないようにします。そして、飲む前と後に両手をついて抹茶をいれてくれた人に感謝の意を込めてお辞儀をします。これが作った人に対して感謝の気持ちを伝えることができる作法です。でもこの文化は最近みんなに忘れられてしまっている気(き)がします。ですから、もし今後抹茶をいれてもらう機会があればお辞儀をしてから飲んでみてください。そうすれば抹茶をいれてくれた人もきっとすごく喜ぶでしょう。
今話したような日本の美しさ、つまり伝統的な文化と感謝の気持ちはだんだんと忘れられてしまうかもしれません。でもこれらは私にとって日本の一番好きな部分なのです。だから昨年の3月11日に地震が起こったときは、避難している人のことがすごく心配でしたし、自分の心も苦しくて切なかったです。でもその時に台湾にいた私は、何も力になれませんでした。毎日ニュースで最新の災害情報を見るしかなかったのです。台湾にいる時に新聞である記事を見ました。それは東京電力の社員の娘がTwitterで父親のことについてつぶやいたものでした。今日はそれを紹介したいと思います。
<つぶやきの内容>
父が明日福島原発の応援に派遣されます。半年後に定年を迎える父が自ら志願したと聞き、涙が出そうになりました。「今の対応次第で原発の未来が変わる。使命感を持っていく。」家では頼りなく感じる父ですが、私は今日ほど誇りに思ったことはありません。無事の帰宅を祈ります。
みなさん、この父親のことをどう思いますか。現場で働く作業員の人達はみんなのために一生懸命日本を守っていました。私は本当に勇敢なことだと思います。このような勇者達のおかげで、私達は今までどおりに生活していくことができるのです。なので、私たちは彼らに感謝する気持ちを忘れてはいけないと思います。
今まで私は忘れないで欲しいことを3つ言いました。「相撲」、「抹茶」、「勇者への感謝の気持ち」の3つです。この「相撲」と「抹茶」のような伝統文化は今の若い人にとってはつまらないものかもしれません。でも文化は国の土台になる大事なものだと私は思います。そしてもっと大事なのは伝統文化や過去の出来事の中に含まれた「感謝」の気持ちではないでしょうか。これから、日本は輝かしい未来をどんどん創って発展していくことでしょう。しかしみなさん、同時にどうかこの感謝の気持ちを絶対に忘れないでください。
WIC(早稲田大学国際学生友好会)主催の「第47回留学生による日本語スピーチコンテスト」に
JET日本語学校の顏思瑜さん(台湾)が出場し、優秀賞をとりました。
顏思瑜 『忘れないで欲しいこと』
♪ 夕焼け小焼けで日が暮れて
皆さん、私が今歌った歌を知っていますか。これは小さい時に祖父に教えてもらった歌です。私は小さいときに祖父と一緒に住んでいました。祖父は日本語を話すことかできたので、私にいろいろな童歌を教えてくれました。例えば「桃太郎さん」「夕焼け小焼け」「7つの子」などです。初めて聞いた時は、歌詞の内容がわからなかったのですが、何回も聞いているうちに、リズムに合わせて歌えるようになりました。なので私は日本の歌が好きです。そして、毎年の大晦日は台湾の番組ではなく、祖父と一緒に日本の紅白歌合戦を見ていました。その中で印象に残っていたことがひとつあります。それは毎年派手な服を着る小林幸子さんと美川憲一さんです。このように、私は祖父の影響で、日本の文化に対する興味が日に日に増していきました。大学に入る頃には日本へ行きたいと思うようになりましたが、なかなか機会がありませんでした。しかし、今年になって時間かできたので留学の準備を始めました。何枚もの申請書を書いて、9月の終わりにやっと日本にくることができました。長年の夢が叶いました。
日本での留学生活が始まってから、私はよく日本人との交流会へ行きました。そこではいろんな人たちに私の今までの経験を話したのですが、そのときに驚いたことがありました。それは、最近の日本人はあまり相撲を見ないということです。私は小さい頃よく祖父と一緒に相撲の取組を見ていました。塩をまく、しこを踏む、取組が終わった後の礼、それら全部が私の印象に残っています。そして、取組中に力士たちを応援するときの「のこった!のこった!」の意味はわかりませんでしたが、取組を見る時は「のこった!」と叫んでいました。また兄弟と一緒に力士たちをまねして、キッチンで塩を取って、家の中で撒いて、遊びました。もちろん、その後は母に叱られました。でも本当に楽しかったです。“すもう”という文化は私と台湾人にとってはすごく崇高なものですし、実際に見ても面白いものです。もしこの文化がだんだんと日本からなくなっていってしまうのならば本当に残念なことです。
ほかに私の台湾の友達からこんな話をききました。それは「抹茶」に関する話です。その子は日本人の友達と一緒に神社へ行き、 境内にある和菓子屋さんで「抹茶」を注文しました。その子は友達に抹茶の正しい飲み方を聞きました。でもその友達は「どう飲んでもいいよ!」と言ったそうです。この話をきいて、私は残念だなと思いました。なぜかというと、「抹茶」は日本の代表的な伝統文化の1つであるだけではなく、飲む時に作った人に対する感謝の気持ちを表すことがもっと大切だからです。大前提として、抹茶をいただくときには両手で持つことを忘れないようにします。そして、飲む前と後に両手をついて抹茶をいれてくれた人に感謝の意を込めてお辞儀をします。これが作った人に対して感謝の気持ちを伝えることができる作法です。でもこの文化は最近みんなに忘れられてしまっている気(き)がします。ですから、もし今後抹茶をいれてもらう機会があればお辞儀をしてから飲んでみてください。そうすれば抹茶をいれてくれた人もきっとすごく喜ぶでしょう。
今話したような日本の美しさ、つまり伝統的な文化と感謝の気持ちはだんだんと忘れられてしまうかもしれません。でもこれらは私にとって日本の一番好きな部分なのです。だから昨年の3月11日に地震が起こったときは、避難している人のことがすごく心配でしたし、自分の心も苦しくて切なかったです。でもその時に台湾にいた私は、何も力になれませんでした。毎日ニュースで最新の災害情報を見るしかなかったのです。台湾にいる時に新聞である記事を見ました。それは東京電力の社員の娘がTwitterで父親のことについてつぶやいたものでした。今日はそれを紹介したいと思います。
<つぶやきの内容>
父が明日福島原発の応援に派遣されます。半年後に定年を迎える父が自ら志願したと聞き、涙が出そうになりました。「今の対応次第で原発の未来が変わる。使命感を持っていく。」家では頼りなく感じる父ですが、私は今日ほど誇りに思ったことはありません。無事の帰宅を祈ります。
みなさん、この父親のことをどう思いますか。現場で働く作業員の人達はみんなのために一生懸命日本を守っていました。私は本当に勇敢なことだと思います。このような勇者達のおかげで、私達は今までどおりに生活していくことができるのです。なので、私たちは彼らに感謝する気持ちを忘れてはいけないと思います。
今まで私は忘れないで欲しいことを3つ言いました。「相撲」、「抹茶」、「勇者への感謝の気持ち」の3つです。この「相撲」と「抹茶」のような伝統文化は今の若い人にとってはつまらないものかもしれません。でも文化は国の土台になる大事なものだと私は思います。そしてもっと大事なのは伝統文化や過去の出来事の中に含まれた「感謝」の気持ちではないでしょうか。これから、日本は輝かしい未来をどんどん創って発展していくことでしょう。しかしみなさん、同時にどうかこの感謝の気持ちを絶対に忘れないでください。